« 高等裁判所 | Main | 民事訴訟法 »

除斥期間

明日のロイヤリングの資料のために、事件の経過の一覧表を作成した。
事件の内容を把握するために時系列表を作成するのはどのような事件でも同じである。
しかし、除斥期間が問題となるような事件となると、時系列表は昭和6年の満州事変から始まる。
もはや事件の時系列表ではなく、現代史の年表のようである。

東京地裁や福岡高裁その他同種の判決の事実認定に沿って年表を埋めて行く。
最初はいつもと同じ時系列表作成作業であったのに、次第にふつふつと怒りがわいてくる。
と同時に情けない気分にもなってくる。

60年ほど前に極東で起きた出来事である。
日中戦争、太平洋戦争が相次いで起こり、物資が不足し、何より軍需産業を支える人手が不足した。
そこで、隣国から3万数千人を銃で脅して船に乗せ、本邦に上陸させ、強制労働をさせた。
無理な輸送と過酷な環境下での労働で7000人近い人が亡くなった。
敗戦後、外務省は強制連行・強制労働に関する報告書を作成したが1部を残して焼却し、以後、そのような事実は存在しないと国会答弁を繰り返してきた。

平成5年にNHKが外務省報告書の存在をスクープし、事件は明るみに出た。
しかし、この事件に関して、国は謝罪も賠償もしない。
日本の裁判所では不法行為のときから20年が経過すれば賠償請求権は除斥期間にかかる。

戦争は国家間の紛争の解決の一つの手段である。
しかし、それのもたらす被害の大きさを見るとき、なんとしてでも避けたい選択であると思う。

学説からは、除斥期間の適用を制限する理論が種々提案されている。
学説を引用する弁護団に対し、国は元自衛隊員の評論家が書いた文章を反論の書証として提出した。
そうか、この評論家の意見を現在の政府の見解と考えてもよいのだな、と思った。

再び情けなくなった。
戦争のもたらした惨禍を直視せず、何の責任も負おうともしないこの国は、一体どこへ行こうとしているのだろうか。


|

« 高等裁判所 | Main | 民事訴訟法 »

「法律」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18402/780201

Listed below are links to weblogs that reference 除斥期間:

« 高等裁判所 | Main | 民事訴訟法 »