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補強証拠

自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされない。
刑事訴訟法にはこの趣旨の規定がある。補強法則と言われている。

被告人が、自分がAという店で現金を盗んだ、と言い、A店の店長が、店から現金がなくなったと言ったとする。
証拠がこの両者の供述だけだとすると、これで被告人は有罪となるのだろうか。
自白以外の証拠は店の金がなくなったと言うA店の店長の供述だけである。
「被告人が盗んだ」という証拠は被告人の供述しかない。

この点につき、通説は被告人と犯人との結びつきについてまで補強証拠を要求していない、とされ、その理由として、現実の立証上の困難が挙げられている(朝山芳史『新刑事手続Ⅲ』250頁)。
そうすると、1行目に記載した法律には、自白以外の証拠が容易に得られるものについては、自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされない、という条文に書かれていない条件がついていることになる。

朝山論文には、補強法則の本家ともいうべき英米でも、補強証拠の問題は、重要性を失いつつあるとされている、とも書かれている。
条文の解釈には、その条文の母法国での解釈も参考になる。
だから、母法国である英米で重要性を失いつつある刑事訴訟法の規定は、我が国の解釈としても重視しなくてもよいのだ、ということが言外に述べられているのだろう。

それでも、何かおかしい、と思う。
立証が困難だからという理由で明文の規定に勝手に条件を付して、被告人に不利益に法を運用することがどうして許されるのだろうか。
法律の条文が現実に合わないというのであれば、立法によって解決すべきではないのか。

『新刑事手続き』(悠々社)は、一つのテーマに裁判官、検察官、弁護士の1者が基調論文を書き、他の2者がその論文をふまえて論文を書くというスタイルで編集されている。
様々な角度から問題を捉えることができ、一つの論文を読んで、それはそうだろうけど、何かすっきりしない、という気分を他の論文を読んで解消できるという優れものである。

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