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会社法(株主代表訴訟)

晴れ。今週半ばからついに天気がくずれ、気温が下がるらしい。

山口先生から一読をすすめられていたダスキン株主代表訴訟事件判決(大阪高裁平成18年6月9日判決判タ1214号115頁)をようやく読む。
長いなあと読み始めたけれど、途中から面白くなり一気に読めた。

株主代表訴訟を提起するためには、まず会社に役員に対する責任追及の訴えを提起することを書面で請求し、会社が一定期間内に責任追及の訴えを提起しないときに訴訟を提起できる。(会社法847条、旧商法267条)
商法でも同様の規定があったが、本件では訴訟提起後に会社に対して責任追及請求がなされている。
判決は、請求後も会社が責任追及をしなかったのだから、適法な訴えと認める、とした。
仮に請求を受けた会社が訴訟を提起すると、株主が提起した訴訟が却下され、会社が提起した訴訟が適法なものとなるとのこと。
株主には、却下される可能性は残るとはいえ、会社に請求することなくいきなり訴訟を提起し、その後に会社に請求する、という新たなルートができた。

会社法では、請求を受けた会社が責任追及をしないときには、請求があれば訴えを提起しない理由を通知しなければならない、という規定が新たにできた。
会社から理由を聞いて、訴訟を提起するかどうかの資料にするためと説明されている。
請求者が理由を聞く必要がない、と思えば会社に尋ねなくてもいい。

事案は、日本で販売するために中国で肉まんを製造したが、肉まんの皮に日本で許可されていない添加物が入っていた、それに気づいた第三者がダスキンの役員にそれを告げた、不許可添加物と知らされた役員は商品を調査し、添加物が検出されないほど微量であることを確認し、在庫を販売し、事実を告げた第三者に多額の金銭を渡した、役員会は事後に一連の事実を知ったが、何もしなかった、後日不許可添加物の件が発覚し、加盟店の営業補償などで多額の出捐をした、というもの。

何もしなかった役員会のメンバーに責任があるのか。
肉まんは販売され、消費されており、回収は不可能である。
ちょうど某ハンバーガー屋が平日半額セールをしていた時期で、不祥事を公表すると業界の競争に生き残れない可能性があった。
発覚したらそれから対応しよう、なんとかなるよ、いう雰囲気があるだけで、役員会として公表しないという決議もしなかった。

読みながら「経営判断」かな、という気もした。
公表しても売上げは落ちる、公表せずに発覚もしなければ売上げは落ちない。
どちらの道を選択するかは会社の舵取りをする経営者の選択によってもおかしくないような気もする。

裁判所は、発覚することはわかっていたのだから、発覚するまで公表しないというのは善管注意義務に反するとした。
金を渡さなければ公表するぞと言っていた人にこれ以上金を渡さないと決めた時点で、世間に公表されるのは時間の問題だと言うのだが、公表すれば自分が金を要求し、既に多額の金を受け取っていることも発覚するから、黙っている可能性だってあったようにも思う。
判決文を読んでいると、発覚の可能性がなければ、公表しないという選択肢もありえたと聞こえる。

発覚後に公表したことをマスコミに批判されて損害が発生したというが、発覚前に公表してもマスコミは叩くだろうから、それはそれで損害が発生する。
マスコミの批判は事実誤認に基づいたものもあったというから、それによる損害までも役員のせいというのもどうだろうか。
つきつめてゆけば、役員の善管注意義務違反というのは、マスコミ対応が下手だったということになるのか。
原告の主張する損害額105億円余りに対し、認容額が2億余りから5億余りなのだが、2億円にしても大きい。

なお、社外取締役の1人から社長に宛てて、事前に公表すべきだ、発覚してからでは手遅れで、大きな損害が発生するという詳細な提言書が届いていたが、この提言書が役員会で取り上げられなかったとされている。

会社の経営者は、常に時代の風を読む力が要求されている。


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