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ブライヤー判事講演

晴れ。

米国連邦最高裁判所スティーブンG.ブライヤー判事講演会。第1部「米国連邦最高裁判所におれる審理の実情」、第2部対談「最高裁判所判事の日米比較」(ブライヤー判事、滝井元最高裁判事)

私がアメリカ憲法の授業に出席していたときに資料として渡されていた判決文にブライヤー判事の名を見た覚えがない。
経歴を見ると、1994年から現職(クリントン任命)。
記憶をたどるとドイツ法の最初の授業の日に湾岸戦争が始まった。その後間もなくブッシュからクリントンに代わったっけ。アメリカ憲法はこのころの1年間しか受講していないから、判事のお名前に見覚えがなくともおかしくない。

米国連邦最高裁判所がrule of law を勝ち取ってきた過程を聞いていると、野蛮さと高潔さとがない交ぜになったお国柄を改めて知る。

チェロキー族の土地から金が発掘され、チェロキー族を追いだそうとしたことから紛争になり、最高裁は、土地はチェロキー族のものだと判決する。それを無視して白人がチェロキー族を追いだそうとして、大統領は軍を派遣する。チェロキー族を追い出すために。

黒人の子と白人の子とを別々の学校に入れることは違憲であると最高裁が判決をする。知事が黒人の子が白人の子の学校に来るのを警察を使って阻止すると宣言する。大統領が軍を派遣する。黒人の子を白人の子の学校に連れて行くために。

最高裁はグアンタナモ基地にとらわれた戦争捕虜に合衆国裁判所に提訴する権利を認める。大統領は不服だが軍を出動させて判決を覆させたりはしない。

大統領選挙でフロリダ州裁判所が手作業で開票のやり直しを命じる。連邦最高裁が5対4でフロリダの判決を覆す。
ブライヤー判事は、多数意見は間違っていると主張する。同様に考える多くの人がいるが、判決に反対して暴動が起きるわけではない。

地球温暖化により海面上昇によりマサチューセッツの渚が減り続ける。裁判所はマサチューセッツに原告適格を認め、EPAに米国の自動車の排気ガスの規制を命じる。

イラク戦争を始めた大統領もアメリカ人ならブライヤー判事もアメリカ人だという事実がすっきりとのみこめない。なんて多様でとらえどころのない国なんだろう。米国人とはどういう国で、米国人とはどういう人達なんだろう?

行政法の山中先生が会場に来ていらっしゃったようで、誰かが山中先生に、EPAの事件は日本では原告適格は認められるかと質問すると、認められないでしょう、とのお答え。
政治的な問題になるかもしれないことでもおそれずに踏み込めるのはどうしてか、との質問にしばらく考えていらっしゃったが、具体的で明確な被害が発生しているときに、政治的に踏み込むかもしれないからと問題から遠ざかるのは意味がない、と仰った。

他方、滝井元判事との対談では、滝井判事が、最高裁であっても判例統一だけでなく個別救済を見落とすこときできないと仰ったのに対し、ブライヤー判事は、個別の事件で仮に見逃しがあっても、重要な問題であれば、同種の問題が最高裁に来るだろうし、来ないとすればたいした問題ではなかったのだ、とのこと。

政治にふみこむことをおそれたり、判決をしても無視されたら自力執行力がないことを考え司法権の範囲を小さくとり、現実の損害から目をそむけることと、助けを求める人がいる限り個別救済を忘れるわけにはいかないとの信念とはどういう関係になるのだろう。

現代米国史そのものを体現する人が目の前で語っているという夢のようなシチュエーションと豪華な対談に、あっという間に3時間が過ぎてしまった。

良い裁判官である勇気が必要だ。
政治や世論におもねるようでは良い裁判官にはなれない。まして自分の出世や保身など考えているようでは良い裁判官からはほど遠いだろう。

ブライヤー判事を見ていると、良い裁判官とはこういうことなのかと実感する。


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