プロ対決(公取07ガイドライン討論会)

晴れ。梅雨明け・・・かな?
イコーネットの上田さんにワードとPDFの印刷の調子が悪いと相談すると、30分程度に直してくださった。
これで長年のいらいらが解消。さすがにプロだなあ。

「知的財産権ライセンス契約と独禁法」討論会。論争をしかけるのは弁護士の石川正先生、答えるのは、根岸教授、上杉秋則氏及び糸田省吾氏。
論点は、公取が公開した07ガイドラインの読み方。そもそも読みにくい、読んでもよくわからない、これでガイドラインと言えるか、という問題提起。
公取の考え方を明らかにするために、ガイドラインに沿って石川先生が設問を準備、それに対して3名に回答いただくという形式で進められる。

独禁法21条では、知財法による権利の行使と認められる行為には独禁法の適用はない、と規定されている。
この21条に対する不要論、有用論でまず、意見が分かれる。

特許権者が、ライセンスを付与するそれぞれの業者に、指定された行政区域内でのみ販売を認めるという内容のライセンス契約をした、との設問に対して、3名の回答者はいずれも問題なし、と答える。
販売地域を限定したライセンス契約は、競争を阻害するのではないかと石川先生が質問されたが、もともと特許権者は独占販売することができ、また販売しないこともできるのだから、その権利の一部を他人にライセンスしただけ、特許権者には競争を創設する義務はない、とのこと。

シェアの高い物(特許なし)を製造している業者が、代理店を通じて販売店に地域指定をするのは?
価格維持効果があるのであればNG。

それなら、と同じ薬効の薬の製造特許を持つAとBが、協定を結んで、販売地域を分ける行為は?
この行為は特許権の行使と関係がない、競争者が市場を分割しているだけだからNG。

用途の多い特許品について、ライセンス契約をするにあたり、用途限定をするのは?
特許権の権利行使の範囲内の行為なので問題なし。

特許期間が終わっても、継続して購入をするとの内容の契約は?
これは、当事者が契約の段階で合理的に計算してください、公取の領域ではありません、とのこと。
特許期間終了後も購入するから、ライセンス料を低めにして、などの交渉があるはず、との理解が前提にある。
ただし、根岸教授は、当事者間はそれでよいが、特許期間終了後にその製品を製造販売する他の業者の販売先がなくなるかどうかの市場への影響を考えるべきとの指摘をされる。
そうすると、場合によっては、ライセンス料を低めに設定して、特許切れになった時点で、市場での競争を制限するからこの条項は無効と言って、他の業者から安くで買うことができるようになるが?

等々各論討論もエキサイティングだったが、石川先生のそもそもの問題提起、ガイドラインとして不親切、読んでもわからない、との問題提起に対して、上杉氏は、ガイドラインを読むときには、それまでの経緯、外国の状況を考えながら読むように、とのこと。
これを聴いてはじめて、これがガイドラインと言えるか?という石川先生の問題意識を私も共有することができた。

ガイドラインには何が「軽微」かについて列挙してあるが、軽微だからどうなる、ということが書かれていない、との石川先生の指摘に対し、上杉氏は、軽微と書いてあれば、書いてなくても適用除外になるのは当然だ、とのこと。
当然ならそう書いておけばよいのに、と私は素人っぽく思ってしまう。

公取のガイドラインが読みにくい、というのは聞いていたが、普通は読みにくい、わかりにくいと思っても、自分の知識が足りないから、読み方が悪いから、と思ってしまう。
ということは、公然とガイドラインが読みにくい、とかみつくことができるのは、第一人者との自負がある人だけだろう。
石川先生えらい。

これだけ豪華メンバーによる面白い討論会を3時間半も聞かせていただいて、こういうことを言うのも気がひけるが、弁護士会館での討論会を聴講するのに、5000円の価格設定は少し高いのでは?


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不正競争防止法研(共同の取引拒絶)

曇り。雨でも曇りでも晴れても日本の5月は気持ちがよい季節だ。

不正競争防止法研究会の今年のテーマは「不公正な取引方法についての検討」。
2条9項1号証には、「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと」となっている。
これだけでは、何が不当な差別なのかよくわからない。公取の「不公正な取引方法」の告示では16項目が不当な差別として挙げられている。
ということで、初回は16項目のうちの1番「共同の取引拒絶」。
F先生が「共同の取引拒絶」が問題となった事例をいくつか紹介される。

その1 タクシー会社多数がチケット会社を設立し、運賃を安く設定している3社にはその会社のチケットを使わせなかった事例。
その3社でチケット会社を設立して、チケットを発行すればよいのに、と思うんだけど?
客だって安い方に乗りたいだろう、と思うのだが、チケットを使うのは、官公庁と会社となっている。日本海側の地方の県での出来事だから、多分官公庁がほとんどかな?
官公庁の人達は自分で払うわけじゃないから、タクシー代の高い安いは気にしない、のかもしれない。

その2 特定の公共工事にある工法を採用している会社が集まって「部会」を作り、部会員は、その工法のための機械を部会員以外に譲渡しない、販売している会社は部会に所属している会社以外に機械を販売しないとの取り決めをしたというもの。
その工法ができる以前は別の工法で工事がなされていて、もともとの工法でも工事ができるのだから、問題がないような気もする。
新しい工法が有用であることをその工法を採用した会社は、役所に説明して回り、納得してもらって発注してもらうという努力を重ねてきて、ようやくその工法が役所に広く受け入れられるようになったのではないのか、そうすると、部会に所属せず、広報の努力をせずに、機械を購入して役所から仕事の発注を受けようとする業者を阻止しようとするのには理由があるのではないかとの問題提起がN先生からなされる。

知財の勉強会では、どうして知識が独占できるのか、がいつも疑問だったが、独占禁止法の研究会では、どうして努力して得た地位を分け与えないといけないのか、がざらざらとした感触として残る。
「不当」とか「公平」ってむつかしい。


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独占禁止法(鶴丘灯油事件)

晴れ。冬から春に向かいはじめた。

独占禁止法実務研究会。
研究会常連の某社内弁護士が欠席。
液晶で公取の立ち入りがあったとのことで、大変そうだなと思う反面、そんな現場に立ち会えるのがちょっと羨ましい。そのうち研究会で報告してもらえるかな。

鶴岡灯油訴訟(最判平成元年12月8日)。
昭和47年10月から昭和48年12月にかけて発生した第一次石油危機の際に石油製品の値上協定を締結実施したこと、輸入原油処理量の割当をしたことに対し公取が勧告審決をし、これを受けて、原告らが民法709条で山形地裁鶴丘支部に提訴。

管轄は東京高裁であるとの被告の主張に対し、裁判所は709条での訴訟として鶴丘支部に認めた。

どうして独占禁止法25条ではなく民法709条での請求したのかと研究会参加者の間でちょっと話題になったが、おそらく消費者による訴訟だったので、鶴丘から東京高裁まで通う時間と電車代を節約するため、鶴丘支部に管轄をとるためだったのだろうということで納得。

原告が直接の取引者ではないことから原告適格も争点となったが、裁判所は消費者である原告らに原告適格を認めた。
なお、合衆国の連邦法では直接の取引者にしか原告適格が認められていないが、州法では直接の取引者以外にも原告適格を認めているものがあり、連邦と州と双方で訴訟が起きた場合、連邦裁判所が一括して審理するとのこと。
直接の取引者でなければ、値上げの効果(被害)をどの程度受けているのか立証が困難だが、他方直接の取引者なら、値上がり分は価格に転嫁できるから実質的な被害はないのではないかと議論になる。
合衆国では、統計的手法で被害額を算定し、その専門の会社もあるとのこと。
合衆国では懲罰的損害賠償があるので、消費者が訴訟を提起しても費用倒れにならず、訴訟が盛んに行われているとの解説。

結局、価格カルテル後に狂乱物価と言われる価格上昇があったので、価格カルテル直前の価格と購買価格の差額が損害であるとは言えない、つまり損害の証明または損害の因果関係の証明がないとして請求が認められなかった。
それなら、何のために価格カルテルをしたのだろうか?と不思議な気持ちになる。
意味のない価格カルテルをして、公取が勧告審決をしたということだろうか?
狂乱物価の引き金となったのが石油の価格カルテルだったので、公取が動いたということだったのだろうか、という感想がつぶやかれる。

懲罰的賠償制度もなく、電車賃も節約して起こした訴訟の結論がこれでは、日本の消費者は訴訟を起こす気になれないだろう、ということで、やっばり課徴金で利益をはき出させて処理するのがよいのかなあ、という結論で研究会終了。


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一件のみの談合(一方的拘束)

雨。寒い。
大学のゼミの教授から昨年は研究時間が十分にとれなかったという反省の言葉の書かれた年賀状が届いた。
この教授にしてこの言葉。
読むべき論文どころか読むべき裁判例、基本書の類を積み上げている私など一体どうなるのだろうか。お正月気分もとんでしまうようなおそろしい話である。

独禁法研究会で土屋企業事件を報告したときのことについて、一件のみの談合では「一定の取引分野」に該当しないので、独占禁止法に抵触しないとの指摘をいただいたと記載したところ、ご覧になった方から、それについては争いがあるとのご指摘をいただいた。

白石先生の「独占禁止法講義」(第3版)を見ると、一件のみの談合とは、特定の受注者に落札させ、他の入札者は落札しないようにする「一方的拘束」であり、昭和28年の東京高裁判決以来、一方的拘束は不当な取引制限に含まないとされていたが、平成14年に一方的拘束が不当な取引制限に該当するとして排除措置命令が出されたと記載されている。
平成14年の審決で、流れが変わったということだろうか。
しかし、そうすると、基本合意は独占禁止法上どういう位置づけになるのだろうか、という最初の問題に戻ってしまう。

読売新聞の連載に知とは体系だという意見が掲載されていたが、正論だと思う。
しかし、個々の問題を論じる前に体系を知っておかなければならない、と言われると研究会報告などいつになってもできそうもない。
にわとりが先か卵が先かで悩んでいるより、一つでも多くの判例とその評釈に当たり、他者との議論の中で体系を理解するしかなさそうに思うのだが。

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独占禁止法(土屋企業)

曇り。空気は少しひんやりしている。御堂筋沿いの花壇には黄金色の銀杏の葉が降り積もっている。

独占禁止法実務研究会で報告担当。事案は、東京高裁平成16年2月20日判決。
受注調整に対する課徴金を課した審決の一部が取り消された事例。

公取委の理屈は、某市の土木工事の受注に関し、69社の間で受注調整の基本合意がなされ、ある工事について、T社が受注しようとして基本合意に基づいて調整しようとしたが、X社がどうしても自分が受注したいと譲らず、X社とT社のたたきあいで、X社が落札したという事案。
他者に関してT社が根回しをしており、Xはそれを認識していたと認定されている。
裁判所は、課徴金には制裁的要素があり、個別の調整に関与していない場合には課徴金を課さないとした。

正直なところ、最初にこの判決を読んだとき、自分のしていないことについては責任を問われない、というごく当たり前のことを述べているだけで、何が面白いんだろう、と思った。
しかし、レジュメを作成するために課徴金に関する学説と過去の審決・裁判例を調べてみると、そんなに単純な話ではないらしい。

基本合意があれば、その存続期間内に受注した工事についてはすべて課徴金の計算の基礎となるとする考え方から、個別の工事について基本合意からの離脱があればその工事を除外するとするもの、そもそも受注調整がなされた個別の工事しか課徴金の対象とならないというものまで、課徴金の性質論だの、とりはぐれを心配する実質論だのが入り交じっていて結構面白かった。

研究会では、独禁法は一定の市場における競争制限を対象としているため、刑法の談合罪とは異なり、1回のみの談合は独禁法違反とはならない、某市の公共土木工事、という一定市場があり、それを対象とする基本合意が独禁法の規制対象となっているのだとの指摘をいただく。

また実務的な視点から、基本合意に基づく話し合いがなされたが、1社にしぼれず、数社のたたきあいとなったとき、競争はより熾烈なものとなるとの指摘があり、さらに、そのような熾烈な競争の結果、最低価格を下回って失格者を出したような入札で、最低価格ぎりぎりの価格を入れて落札した者に対し、課徴金を課すのが妥当かという議論になる。

その他、リーニエンシー制度の実情等興味深い指摘をいただき、報告担当としては楽しい会となった。
ところで、この研究会の出席者は女性の割合が高い。なぜだろう?


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独占禁止法(和光堂事件)

晴れ。気温が下がっている。今年の冬は寒いとか。
温暖化というネーミングではなく、現象を端的に示す表現はないものか。

独占禁止法研究会。和光堂事件(最高裁昭和50年7月10日判決)。
和光堂と言われても何の会社かわからないが、判決文を読むと赤ちゃん用粉ミルクの販売会社で、シェア10%(当時)とのこと。
ここが総販売元となり、卸売価格と小売価格を指定していた。これが独占禁止法の不公正な取引方法に該当するとした審決が維持された事案。

和光堂の言い分は、卸売価格、小売価格が下がれば業者のマージンが減り、和光堂が販売する粉ミルクを小売業者が扱わなくなる、そうすると赤ちゃん用粉ミルクのブランド間競争がなくなり、大手業者の独占状態となる。
競争状態を維持するために、再販売価格を指定する必要がある、というもの。

和光堂の粉ミルクを安く売るかどうかは小売業者が判断すればよいことで、安くしてたくさん売れたら、一つ当たりの利益は下がっても、総体として利益は上がるかもしれない。だからこの理屈はよくわからない。

それにしても、再販売価格指示の被害者は誰なのだろう?
本当は安く売りたいのに安く売ることのできない再販売価格を指示された卸売業者や小売業者だろうか?
安く売らないことで、高い利益率を維持できるのだから、卸売業者や小売業者は被害者ではなく、むしろ利益を得ているのではないだろうか?
それでは被害者は消費者なんだろうか?和光堂のシェアは10%なんだから、品質の割に高いと思ったら他のブランドの粉ミルクを買えばよいというだけのことではないのだろうか?

実は他のブランドも全部再販売価格を指示していて、公取は当初価格カルテルを証明しようとしていたが、カルテルの証明ができなかったので、再販売価格指示で違反としたのだろう、という話が研究会で出てきた。
それならわからないでもないけど。
そもそも和光堂は、再販売価格を指示してもさしてメリットはないだろう。自分の取り分が増えるわけではないし、販売数が伸びるわけでもない。
公取の事実認定によれば、消費者の行動として赤ちゃん用粉ミルクは、最初に使ったものをずっと使い続けて、ブランドの変更をしない商品だとされている。
そうだとすると、そもそも安売りをしても販売数はそんなに伸びるわけではないだろう。
そうすると、再販売価格の指示は、量販店が安く売るのを阻止したい小売業者にとってのみメリットがあったのではないだろうか?

・・・・なんだかすっきりしない話だった。

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独占禁止法(東洋精米機事件)

雨。

独占禁止法実務研究会。東洋精米機事件(東京高裁昭和59年2月17日判決)。
独禁法審決・判例百選(第6版)では、「実質的証拠の原則」に関する判決として扱われている(230頁)。

公取委が市場を画定していながら、シェアを認定するにあたって、画定した市場外の販売額を算入して認定したというもので、これだけ見ると、公取委がなんだか不細工なことをしたなあ、で終わってしまいそうな判決。
精米機メーカーが、販売業者を通じて米穀小売業者に精米機を販売するにあたり、販売業者との間で競合品を扱わないとの内容の契約をしていた事案。
研究会では、当時公取委は、不公正な取引方法について市場の画定は不要だと考えていたのではないか、との意見が出される。
そうだとすると、この判決は、不公正な取引方法についても市場の画定が必要だということを明らかにした判決となる。
さらに、判決では、すでに各販売業者が事実上特定の事業者の系列に組み込まれている場合は、排他的条件付取引に公正競争阻害性が認められないとされる余地が生ずるものと解される、と述べている。
これについては、系列化を進展させれば、市場の閉鎖性は一層甚だしくなるので、容認すべきではないとの批判が強い。
研究会ではこれについて、他の80%のメーカーが系列化しているとき、最後の20%のメーカーが排他的条件付契約をして系列化を完全なものとしたら、最後に系列化したところが独占禁止法違反なのか、という議論がなされる。
他の業者もそもそも最後の20%のメーカーのものは扱おうとはしていなかったのだから、誰も排除されていないじゃないか、最初の10%の系列化は問題にされていなかったのに、他人が系列化して、系列化が進んだ段階で最初の10%も違法とされるのか、他人の行為によって事後的に違法となるのか、という議論もなされる。
白石先生の『独占禁止法講義』(第3版)では、反競争性という弊害の発生にどれほど寄与したか、という点が基準となるものと思われる、と記載されている。
そうすると、シェアの大きいところの系列化だけが違法で、排他的条件付契約を破棄されることになり、シェアの小さいところの系列は残るということになりそうだけれど・・・?

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独占禁止法(観音寺市医師会事件)

曇り。夕方になっても涼しくならない。

独占禁止法研究会。観音寺市の医師会事件。
医師会が床数や診療科目をコントロールする行為が独占禁止法8条に抵触するとされた。
ここまで露骨にするのもどうかと思うが、かといって完全な自由競争にすると、お医者さんは都市部に集中し、過疎地は医療においても過疎になるのではないかと思うが、そういうコントロールは事業者団体ではなく、行政がすべきということか。
研修医の制度をいじったとたんに医師不足が生じたのではなかったっけ。
もっともこの事件は観音寺市の中での微妙な調整事件で、都市部がどうとかいうよりもっとちまちました感じはあるが。

お年寄りのために行政が特定のタクシー団体と契約をして低料金で運行させたら何か問題があるかという問題が提起される。
行政法の問題はあるでしょうけれどねえ、という反応で、業界が働きかけたのではなく、行政の側からの働きかけなら問題ないのではないか、低料金で運行となると不当廉売の問題ではないか、福祉目的があるからそれもクリアされるだろう、といった意見が出される。

行政法からいえば、随意契約となり、地方自治法234条。政令で定める場合に該当するときに限り(一般競争入札ではなく)随意契約をすることができる。
結局、予定価格が普通地方公共団体の規則で定める額を超えない場合(令167条の2)で、公共団体の規則の問題となる。
けど、こういう場合通常は一般競争入札なんだろうなあ。

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独占禁止法(郵便番号自動読取機)

晴れ。夏らしいお天気。

独禁法研究会。宮本先生ご報告。「郵便番号自動読取機入札談合事件」。
事件当時、この機械が作れるのは日本で2社だけで、それぞれ右流れ、左流れ、と違うタイプのものを製造していた、官の方から入札前に一方に内示があり、内示のない方は入札をしていなかった、受注状況としてはほぼ半分ずつだったというもの。
なお、その後さらに1社が技術開発に成功し、現在は3社が製造している。

この状況で2社が談合していたといえるか、官からの内示がなくなって以後も再発のおそれがあるか。

最高裁の判決(平成19年4月19日)は、審決書に旧独占禁止法54条2項の適用の基礎となった認定事実が明確に特定されていないことが、旧独占禁止法57条1項の規定に違反するか否か、という点のみ判断し、明確に特定されていなくても旧57条1項、旧54条2項の規定に違反しないとして原審(東京高裁)に差し戻した。

それはそれとして、やっぱり官からの内示で半分ずつ受注していたという態様が問われているとき、官からの内示がなくなっても、他の方法で同様の市場分割をすることができるから、再発のおそれがなくなったとはいえない、という判断はどうだろうか。
問題となっているのか官からの内示を受けて受注行動を決めるというものなのだから、やはりこの行為が繰り返されるおそれがあるかないかということが問題になるのではないだろうか。
それとも、独占禁止法というのは、行為態様を問題にしているのではなく、市場分割という結果から考えるのだろうか?
また、レジュメでは「意識的平行行為」という用語が記載されていて、同調的値上げなどの場合には違法とはならないとの説明がなされた。
ライバル社の動向を探り、独自に自社の方針を決めた場合、つまりライバル社に探りを入れて何月何日に30円値上げすると決めたことを知り、自社も同日同額の値上げをすることを決定するような場合は、ライバル社と事前に交渉しているわけではないから価格カルテルにはあたらない、ということらしい。
前回の研究会では、業界団体の会合に出席し、値上げの話をしているときに、自分のところは一緒にできないよと言っていたが、後に追随して値上げをしたことをとらえて違法とされていた。
今回の2社は、互いに交渉したわけではなく、官からの内示を受けて行動している。2社しかないので全く顔をあわせていないわけではない。
何がよくて何がいけないのか、いまひとつ釈然としない。

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独占禁止法(東芝ケミカル)

曇り。まだ雨は降らない様子。
会計士の先生の所に資料を持って相談に行く。先生が資料を見ながら補充する書類の名前を挙げられる。メモを持ってきたらよかったとあせる。費用はいくらくらいかかるのかとちょっと気になったりもする。ざっと見ていただいて、方針をお聞きし、アドバイスをいただいているうちに、もっと早くご相談していればよかったという思いがわいてくる。破産会社の税務をお願いしてしまうと、めんどうごとからひとつ解放された気分になる。
お医者さんは病気になってはじめて患者の立場がわかると言われるけれど、私も相談者の気持ちに少し近づけたかも。

独占禁止法実務研究会。テーマは東芝ケミカル審決取消請求事件。
手続上の論点と実体上の論点がある。手続の方はおいておいて、実体上の論点は、値上げが談合によるものか独自の意思決定をしたものか。
業界団体の会合に出ていて、値上げの話は出ていたが、うちは特殊事情があるから皆さんとは一緒にはやらないと言っていて、その後に他社が値上げをした後に値上げをしたことが、価格カルテルと認定されたというもの。
値上げの話をしていた会合に出てしまったのがいけないらしい。
しかし、材料費の高騰などで、それぞれが独自の観点から値上げをすることはある。
研究会のメンバーから、値上げをしたいと具体的に思ったら、業界の会合に出ない方がよい、というアドバイスをしているという発言があった。
会合に出てしまったら、その後は材料費が高騰して値上げをしたいと思っても、値上げに経済合理性があっても値上げをするな、という意見も出される。
公取委に相談すると、同業者に製造委託をすると原価がわかってしまうのでNGという回答が出るらしい。
そうすると、遠方の顧客への商品の輸送費を節約するために、同種の商品を製造している会社同志が、それぞれ相手の工場に近い顧客への製造・輸送を委託し合うという合理的な行動もNGとなる。
もともと業界のメンバーが少なくて、2社でシェアのほとんどを占めているという状態だと、相手の会社のカタログを見たら、価格がわかる。嫌でも相手の会社の動向が伝わってくる。このような場合はどうだろうか、という問題提起もなされる。
シェアが小さければどうだろうか、という問題提起もあったが、これに対しては、本当に小さいのか、市場をどう画定するのかに注意しなければ自分が思っているのとは別の小さな市場を認定されるおそれがあるとのこと。

いつもながら、ここの議論は新鮮に聞こえて(今までが不勉強なだけ?)退屈しないなあ。

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